僕自身のスポンサーシップをはじめました
タイトルのとおりです。僕を支援していただくためのスポンサーシップをはじめました。
僕の OSS 活動のスポンサーを募集します。ご協力よろしくおねがいします! / @tk0miya のスポンサー募集 https://t.co/RqC8goNqjR
— Takeshi KOMIYA (@tk0miya) 2018年4月16日
おかげさまでとても多くの方に賛同していただき、かなりの額を支援していただきました。
Sphinx やら blockdiag やら、自分が関わっているプロダクトが多くの人に使われている結果なのだと思うと、これからも継続していこうと思いを新たにしました。
ここでは、スポンサーシップを初めたときの自分の考えをまとめておこうかと思います。
なぜはじめたのか
gist にも書いたように、お茶代の捻出が目的です。
Sphinx のメンテナをやるようになってから、ちょくちょく喫茶店で開発をするようになりました。
通勤の電車の中や自宅でも活動しいますが、休日はまとまった時間を使うために近所の喫茶店にこもることが多々あります。
集中しやすいとか、気分転換とか、いくつかの要素があるんじゃないかと思っています。
ありがたいことに僕の OSS 活動にはあまり費用が掛かっていません。
最近は GitHub や Travis CI のように、いろんなサービスで OSS 向けに無料のサービス提供をしていますし、所属している会社(株式会社タイムインターメディア)が開発機材を貸与してくれています*1。確かにドメインの更新費用やちょっとしたサービス利用料(S3 やら DNS やら)があるにはあるのですが、ちょっとした持ち出しで済んでいました。
そんな低コストの活動の中で、ひとつだけ "それなりの額" が掛かっているのが喫茶店代なのです。
チリも積もれば、とはよく言ったもので、一杯ではたいしたことがない紅茶も、たくさん飲めば結構な額に積み上がるんですね。束で買ったコーヒーチケットが雄弁に語っています。
喫茶店で開発してるなんて贅沢してるなー、と自分でも思う部分があるのですが、開発がはかどっているのも実感としてあります。そこで、この費用を個人の持ち出しではなく、スポンサーという形で協力してもらえないかと今回呼びかけてみました。
なぜ個人へのスポンサーなのか
今回募集しているスポンサーシップは、個人に対するものです。
Sphinx プロジェクトや blockdiag プロジェクトで呼びかけているものではありません。
理想で言えば、Sphinx プロジェクトとして広く (海外からも) 支援を受けたほうが、金額も集まりやすいですし、より多くの開発者に還元することができそうです。では、なぜ今回はプロジェクトとしてのスポンサーシップにしなかったのでしょうか。理由はふたつあります。
ひとつは先ほど説明したように、そもそものモチベーションがお茶代の支援という、極めて個人的で、しかも目標額が低いものだったのもあり、プロジェクトとして呼びかけるのは仰々しすぎました。
もうひとつは分配の問題です。現在の Sphinx プロジェクトはかなり多くの部分を僕がカバーしているとは言え、他のメンテナも要所要所で手助けしてくれているのも確かです。プロジェクトとしてスポンサーを集めた場合は、彼らにも同様に支援がなされるべきです。それを考えると一気に事務コストが増えます。公平な分配とはなんなのか。予算管理が必要になるのではないか。また、国際送金や税金についても考えなくてはなりません。
こうしたことを考えたときに、プロジェクトとしてスポンサーシップを進めるのはあまりに手間がかかりすぎると考えたので、こちらの線で検討するのは早々に諦めました。こうした分野に知見がある方が手伝ってくれるのであれば、いつかはプロジェクト規模でできると良いですが、今はその時ではないと考えています (自分の可処分時間を考えても)。
OSS でお金をもらうことについて
正直なところ、自分が OSS でお金をいただくことについては、自分の中でもスッキリはしていません。
自分ではない誰かが対価を得ることや、寄付を受けることについては気にならないのですが、いざ自分になると…という謎の感情があります。
あまり意識をしたことはないのですが、自分の中では OSS 活動は奉仕活動に近い、無償の活動だという思い込みがあるのかもしれません。一方で、それぞれの開発者のリソースは有限ですから、その活動は何かしらの形で讃えられてもおかしくないし、OSS でうまく稼げるのであればそれはそれでよい、とする見方も同居しています。
他者に対しては継続的でよいやり方だ、と褒め称える一方で、自分の場合はその部分にブレーキを踏んでいるのかもしれません。正直、自分でもなんでそんな考え方になっているのか、うまく説明できません。
もしかすると、対価を得てしまうと責任が発生するのではないかと恐れているのかもしれませんね。
最終的には半年以上悩んで、はじめて見ることにしました*2。
責任感
ということで、責任感はあります。
プロジェクトへの支援であればまだしも、僕個人への支援ですので、もし1年間遊び呆けてしまったら、スポンサーに向けて顔向けできない、というプレッシャーはあります。
急に仕事が忙しくなってしまったら、Sphinx の開発に飽きてしまったらどうしよう、みたいな考えも頭によぎります。
とはいえ、そんなことを心配し続けても仕方がありませんし、そういうぼんやりとした不安はねじ伏せて、前に進むだけです。
いままでも Sphinx のメンテナであることのプレッシャーは多少なりともありましたし、忙しかった時期も遊んでいた時期も含めて、年間通じてメンテナンスし続けていたわけですしね。
お金をもらっていても、もらっていなくても、やることそのものは変わりません。
ということで、顔の皮を厚くしてこれまでのペースで "ほどほどに" やっていこうと思います。
スポンサーシップのおかげで「より速く前に進む」のではなく、これまでのペースを維持するということに捉えて、プレッシャーにしないように意識していこうと思います*3。
ちなみに、6月にはワールドカップがあるので、その時期は活動が鈍るのは決定しています。あしからず。
申し訳無さ
つらつらと吐露していくと、他のメンテナ、他の OSS 開発者への申し訳無さみたいなものはあります。
それぞれ自分の時間や、何かしらの費用を持ち出しで OSS への貢献をしているのに、自分だけスポンサードされてよいのか、と思ったりもします。
ここも整理ができていないことのひとつです。なにか思うところがあったら教えてください。
指摘いただいたこと
sphinxがいろんなところに使われているのは認識しているけど @tk0miya さんとそれ以外のコミットの割合が70:30なのはOSSとしてどうかと思ってるより喫茶をおごるより他のデベロッパーのアクティビティを増やしていく方向に持っていたほうがガバナンス的にはいいと思うのだ。https://t.co/iIrPp8Oa4Y
— Takuya Noguchi (@tn961ir) 2018年4月17日
おっしゃるとおりです。
いまの Sphinx プロジェクトはひとりに作業が偏ってるのであまり健全とは言えません。
過去を振り返っても、作者の Georg が開発していた時期、 @shimizukawa が引き継いで*4メンテナンスしていた時期、そして今、とどの時期もメインのメンテナが作業の大部分をしているというプロジェクトの構造は大きく変わっていません。
ですので、今の時点では協力してもらうべき「他のデベロッパ」がほとんどいないというのがそもそもの問題です。
ドキュメントという地味な分野は人気がないのか、あまり開発に参加したいという人が少ないのです。
ですから、あらためて声を大にしていいます。
Sphinx プロジェクトではメンテナを募集しています。
未経験者歓迎です。
イシューの切り分け、バグの再現確認、ドキュメントの更新、使い方の質問へのフォローアップなどなど、Sphinx の内部構造を知らなくてもできる作業も山ほどあります。
メンテナには日本人が多いので、日本語での相談なども気軽にできます。
興味がある方は声を掛けてもらえるとありがたいです。
税金
こういうこと書くと水を指すようだけど、インターネットにおおっぴらにやってる人も見かけるから書いとくと、日本の税法で個人への「寄付」が成立する条件は厳しくて、たいていの場合「贈与」になって、貰った側は一時所得となるので、金額が大きくなる可能性があったら注意した方がいい。
— Yoshifumi Yamaguchi (@ymotongpoo) 2018年4月17日
別に「寄付やめろ!」って言ってるわけじゃなくて、注意しないと問題が起こる可能性があるよ、ってのを言ってるだけなので。もっともそこまで支援が集まるようであれば万々歳で、たいていはそんなにでかくならないとは思うので。あと貸与の形にできるものはそのほうがいいこともあるかもしれない。
— Yoshifumi Yamaguchi (@ymotongpoo) 2018年4月17日
そのとおりですね。
寄付額が年間 110万円を超えると贈与税がかかりますので、もし他にスポンサーシップをはじめる人がいたらご注意ください。
自分の場合は問題なさそうです。
まとめ
- スポンサーシップをはじめました
- おちこんだりもしたけど、私は元気です
- スポンサーは引き続き募集中です